Food
「食」は私たちの楽しみであり、喜びであり、また生きるために欠かせないものです。私たちにとって「食」が文明の胚芽となり、「食」を求めて移動し、木の実を食べ、猟を行い、麦や米をつくり、土地に手を入れてきました。土地を耕すことは心を耕すことの比喩となって「文化」が生まれ、私たちの暮らしは物心共に豊かになってきました。最初は暮らす周辺の地域由来の食糧を得る「身土不二」の暮らしをしてきましたが、文明によって遠くの地域から求めることが可能となり、必要以上の食を生産し、破棄し始めました。豊さが高まる一方で貧困も生み出し、膨大なエネルギー消費は深刻な地球規模課題を呼び、その結果、人類に最も深刻な食糧危機へと近づき始めています。
数多くの問題はその原因も周知されているにも関わらず、「自分だけではどうしようもない」「誰かがやってくれるだろう」「何やっても無理だろう」等といった、漠然とした不安の中、見て見ぬ振りをする毎日が続き、研究者が警鐘を鳴らす、私たちにとって致命的な地球環境のバインダリーを越える時間に刻一刻と近づき、次世代の大きな負の遺産を残そうとしています。人間の最大の武器である科学技術がこの危機を救ってくれると期待する人がいるかもしれません。しかし、放蕩な生活習慣を支えるために科学技術があるのではありません。サイエンスは自然の摂理を解き明かし、テクノロジーはその自然の中で人間が生きるための術です。科学技術は決して自然と離れたツールではないのです。自然との対話のない一人歩きする科学技術は、我々の生活を脅かす気候変動や様々な地球規模課題を生み出す孵化装置となってしまうでしょう。
では今を生きる私たちが次世代に何ができるのでしょうか。未来に向けた真のイノベーションはどのように実現できるのでしょうか。複雑に絡んだ問題の中で、特効薬のように都合の良い解決策を期待しない方がいいでしょう。しかし私たちは針路を見失ったり、不都合な真実から目を背けたり、抽象的な議論に終始する日々をこれ以上、過ごしてはなりません。まず「行動」を起こすべきではないか。Learning by Doingー「行動」こそが、私たちに未知の解決に向けて様々な学びを与えてくれる最良の教師ではないでしょうか。
「行動」を開始するために、私たちにとって最も身近な問題から考え始めてみます。それが生きるための原点である「食」です。「食」こそ、自然からエネルギーを得る自然との身体的な対話の手段であり、そこから自然とのつながりをつくる智慧をみがき、私たち一人一人が行動できる主題となるものです。この毎日欠かせない「食」から、人、生活、健康、環境、地球について考え、私たちがあるべき生活のあり方を模索し、 現代社会があるべき「身土不二」の暮らしの在り方を模索する二つの活動を行います。一つは現場を持つこと。つまり飲食店を経営して地域と食の在り方を考え、実践することです。そして、ウェブマガジン「The Sustainable Food Magazine Ubuntu」(「サステナブルフードマガジンUbuntu」)での情報発信です。カフェでの活動は、つわのカレッジのフードLABが軸に行動していきます。サイトは、未来に対する問題意識を共にした、テクノロジー、農業、宇宙、アート、デザイン、映像、料理など様々なバックグランドを持った専門家による編集委員と彼らのネットワークによって広がる多彩な一人ひとりのライターと読者の皆様によって運営しています。ライターが、未来の「食」を考えるために重要な現場、人々を調査・取材し、読者と共有する記事を寄稿する他、インタビュー、トークイベント等を公開します。